先日の90000Gの対戦、対戦者の皆様大変お疲れ様でした。御覧頂いた方々大変ありがとうございました。10時間を超える長丁場でしたが、企画運営を含め、やりたいことが全部出来たと思っています。カルドセプト界の恒例行事を目指して続けていきたいと思っておりますので、皆様これからも温かい応援と野次をよろしくお願いします。
なお、先日の対戦はYouTubeにアップロードしております。ぜひお楽しみください。
90000勘を言語化したい
さて、先日の対戦を終えたところで私の90000G対戦戦績は5戦3勝。昨年度のチャンプのゆめまくらさんを打ち倒し、勝ち星、勝率、戦績とどこに出しても恥ずかしくない一端の90000ゲインニストになれたと思っています。
この辺りで、本格的に90000Gの攻略についてしたためようと思い立ちました。
カルドセプト通信の90000Gスペシャルでも申し上げたように、このレギュレーションは決してゲーム性も競技性も高いものではありません。しかし、極端なレギュレーションについての考察は、各要素に対する知見を高めることに繋がるのではないかと思います。ちょっとだけ、お付き合い頂ければ幸いです。大丈夫! 90000G対戦の1/100くらいの時間があれば読めますよ!
なお、特に断りがなければ、土地価値は100という前提でお話させていただきます。また、便宜上「目標魔力が90,000Gで、ラウンド制限がないカルドセプトの試合」のことを90000Gと表記します。
1.達成系
1-1.資産の築き方
まず、最初に論じておきたい。90000Gは寛容なカルドセプトです。
目標魔力7,000Gだと、20~40ラウンド程度で試合が終わってしまいます。築いた資産の価値が暴落するような妨害を数回浴びれば、勝利は大きく遠のきます。大掛かりなギミックは、発動するチャンスが無いまま終わることもままあります。
妨害を撃たれることを考えてみますと、90000Gでは必ず妨害を受けます。ステルスしていれば大丈夫なんてことはなく、どこかに隙ができます。断言しましょう、必ず貴方は大打撃を被ります。しかし、安心してください。90000Gは1度や2度の妨害をクリティカルな問題としません。リカバリーのチャンスはいくらでもあります。
90000Gは波です。波のように総魔力が増減していき、各自の護符枚数と共に振れ幅がどんどん大きくなり、やがて決壊するように90,000Gという額を超えて達成にたどり着きます。波ですから何度凹んでも良いのです。護符の枚数と領地を確保する能力さえあるのなら。土地が導火線で、護符が火薬なのです。どんなに強大な目標魔力でも、十分な火薬に点火できさえすれば、いつか吹き飛ばせます。
逆に、妨害を撃つ方にも自由があります。チャンスはいくらでもあります。100ラウンド以上鉄壁の守備を展開し続けることなんて出来る訳がありません。効率はともかくとして、貴方が行使したいギミックを行使できるタイミングは絶対にあります。
なので、安心してどんどん妨害を喰らいましょう。思惑を通してやりましょう。90000Gは妨害が沢山あるから憂鬱……と考えている貴方。90000Gほど自由に妨害を撃てる、撃ってもらえる対戦は他にありません。全焼きやアースシェイカーは恐ろしい気がしますが、誰か一人がクリティカルに遅れを取ることにはつながりにくいものです。シーソーゲームを楽しみましょう。
という訳で、何度も言います、リカバリーする時間もチャンスを伺う時間も十分すぎるほどにあるのです。90000Gは怖くない、とても寛容なカルドセプトです。
1-1.まとめ
90000Gは波。何度沈んだってよい。何度狙ったってよい。
1-2.形成するべき資産
サドンデスも期間制限もないこの対戦で勝利するためには、当然ながら総魔力を90,000Gまで貯めなければなりません。どのような資産で、この額を目指すべきでしょうか。
まず、土地から考えてみます。土地は5連鎖させてすべてをレベル5にしたところで、17,600Gにしかなりません。メインの資産として考えるのは難しいでしょう。過去4年間の対戦記録を見ても、試合終了時に土地だけで20,000G以上確保している対戦者は1人もいません。15,000Gといったところが関の山でしょう。ただし、土地がないとそもそも護符価値を上げることが出来ないので、無下にしていいわけではありません。重要なのは価値よりも数といったところでしょう。土地が導火線で護符が火薬です。
次に手持ち魔力。過去4年間の対戦記録では、終了時の手持ち魔力は少額~30,000Gくらいといったところでしょうか。終盤はグレイス1発で10,000G弱の収入が期待できることを考えると、周回ボーナスと合わせて20,000G程度は手持ち魔力を見込んでも良いでしょう。
最後に護符。土地の15,000G、手持ち魔力の20,000Gの残りを埋めるとなると55,000Gが求められます。仮に護符を600枚持っていて、価値が99Gになると59,400Gまで伸びます。過去の対戦で同種類の護符を最も持ったのがまがたまのひろよしさんで900枚オーバー、試合の勝者は600枚~700枚程度を持っているケースが多いです。そう考えると、600枚というのは現実的な数字であり、かつ必要不可欠な数字と言えるでしょう。ただし、同じ護符を大量に持つという行為は、ヒートインプやソウルコラプターへの脆弱性に繋がることは意識しておかなければなりません。
1-2.まとめ
土地が導火線で護符が火薬。自力達成するためには護符は600枚くらい必要。
2.スペルが持つ意味
2-1.アースシェイカー
アースシェイカーは、基本的に全員に効くスペルになります。MHP30以下で90000Gにおいて拠点となるクリーチャーの数があまり多くないことも理由の一つです。しかし重要な事は自分の土地価値が下がらなくても、人の土地価値が下がれば、護符の価値が暴落するということです。土地価値そのものは90,000Gという魔力から比べると、2割以下の小さな数字であることを忘れてはなりません。
アースシェイカーを撃つと護符の価値が下がる(5連鎖のレベル5土地5つが、5連鎖のレベル4土地5つになった場合、護符の価値は実に90G近く下がります)。現金が余る90000Gにおいて、この価値を再度上げ直すことはさほど難しくはありません。しかし一時的にでも護符価値が下がることにより「護符を効率的に買うことができるようになる」「達成が少しだけ後回しになる」「致命的なコラプションが刺さる時間ができる」という三つの現象が発生します。コラプションについては別項で述べるものとして、最初の二つについて考えてみましょう。
まずひとつ目、護符が買えるようになることについて。たとえば、貴方が水5連鎖でレベル5を二つ、敵セプターの1人が水4連鎖でレベル5が一つ持っていたとします。これだけで水の護符価値は99Gに届いてしまいます。レベル5が3つというのは、90000G対戦では50ラウンドくらいには発生し得る環境です。いかに90000Gと言えども、一度に99Gの護符を50枚買うことは容易ではありませんし、絶対にそれ以上価値が上がらない護符を買うコストは護符ボーナスだけではペイしないでしょう。
そこでアースシェイカーで護符価値をリセットして護符を買うという手段が選択肢としてあがってきます。今年の対戦中に16bitsさんが「走るためのアーシェ」という表現をしていましたが、これは決して冗談などではなく、護符を購入するための確かな手段です。護符を買うためにピルグリムを入れたりする事がありますが、護符が100枚買える程の手持ち魔力を持っていないとそのポテンシャルは引き出せないため、機能時間帯がかなり後ろ倒しになりがちです。過去、八朔さんや破魔矢さんはピルグリムとアースシェイカーがどちらも入ったブックを組んでいますが、これは下がった護符を一気に100枚以上購入するチャンスを狙える構成ですね。
余談なのですが、もしかすると最も時間がかかる90000Gは、アースシェイカーなどの護符価値を下げるギミックが全く入っていない水の走りブックが4人揃ってしまった時なのではないかと思っています。そうすると、早々に水護符の価値は頭打ちになり、必要枚数600枚なんてとても買えない環境になります。そして全員で100枚ちょっとの護符を握ったままウロウロ、まさに苦行と言える状態になってしまうのでは……。ちょっと興味深いです。
閑話休題。
次にふたつ目、達成が「少しだけ」後回しになることについてです。これは本当に「少しだけ」です。7,000Gの試合では達成を10ラウンド遅らせることには大きな意味がありますが、90000Gでは10ラウンド遅らせることにあまり意味はありません。焼きのように土地そのものがなくなるわけではないので、再度レベルを上げればすぐに護符価値は元に戻ります。おそらくアースシェイカーが切れたタイミングで再度護符価値が上がり、同じ人がリーチを掛けることになるだけでしょう。単発のアースシェイカーは、自分が十分上がりが見込める護符枚数と土地を確保しており、足勝負になっている対象者を止める程度の遅延効果しかありません。走れるブックを組んでからアースシェイカーを入れましょう。
2-1.まとめ
アーシェを撃って走ることができる。アーシェを1発撃って止めることは難しい。
2-2.全体焼きスペル
基本的に、働きとしてはアースシェイカーに準じます。レベルを下げて護符価値を下げるか、連鎖を切って護符価値を下げるかの違いです。
遅延スペルとして、アースシェイカーと比べられがちな全焼きスペルですが、基本的に護符の価値をコントロールしたいだけならアースシェイカー1枚で事足ります。カードとスペルターンを大量に消費してもなお全体焼きスペルを選択する理由は、護符価値を再度上昇させることが比較的難しいことにあります。
90000Gのブックは、後半戦で威力を発揮するスペルカードの枚数がどうしてもサボれません。また、シンリュウやアスピドケロン等の殴って配置できるクリーチャー以外は、どうしても機能時間帯が短くなります。そのため、焼いた後のリカバリー力は通常のブックよりも低くなっています。焼きブックとしては、そこが付け入る隙となるでしょう。
また、焼き切るタイミングが多いことも追い風です。100ラウンド以上チャンスが有るわけですから、まともに焼けないということはまず無い。狙えば、何度かは盤面をリセット出来るはずです。90000Gの収入額を踏まえれば、焼きスペルのコストもディスカード以外は微々たるものでしょう。
もちろん、90000Gならではのデメリットもあります。最大のネックは逃げ切りができない点でしょう。通常の対戦では、焼きブックでは達成の他に、40ラウンド終了時に総魔力が大きくなるような勝ちパターンがあります。しかし、規定ラウンドがないと、自分が達成する以外に勝ちようがありません。
また、焼きブックに採用されがちなクリーチャーの中で、90000G環境下に適応できるクリーチャーがあまりにも少ないということも欠点として挙げられます。オドラデクやジャッカロープはシンリュウにあまりにも虚弱で、カウンターシールドが手放せなくなってしまいます。テンペスト型にするとなると、もうシンリュウでもアスピドケロンでも撫でられたら死ぬようなクリーチャーしかいません。焼きで長引かせれば長引かせるほどアスピドケロンは強くなるわけですし……。
焼く方は焼いた後の環境をうまく活用できる構築をすることが大切であり、焼かれる方は100ラウンド以上焼かれずにカバーなんてことは絶対にできないと覚悟する必要があります。どちらにしろ、焼けた後の攻防を無視した構築はできないと心得ましょう。
2-2.まとめ
本気になったら絶対焼ける。予防より対応を。
2-3.コラプション
大前提として、90000Gにおいてコラプションはほぼなまくらです。意味はありません。
基本的に、90000Gに限らずコラプションは護符価値が高ければ高いほど機能率は落ちます。普通の試合でも、序盤に必要な護符枚数を確保して、さあ今から周回ボーナスを得てレベルを上げるぞ……。そんなタイミングで撃たれるコラプションが最も効果が高いコラプションですよね。90000Gの場合は、序盤の失速を立て直す時間は十分にありますし、護符価値が上がっている時間帯の方がずっと長いです。なので、繰り返しになりますがほぼコラプションに意味はありません。2~3発撃たれても、適当打ちならば問題無いでしょう。
例外的に喰らってはいけないのは「護符を大量に売らなければならなくなるようなコラプション」です。
たとえば、貴方が水6連鎖すべてシンリュウのレベル5が6つ(土地価値21,120G)と水護符600枚(護符価値99G×600=59,400G)と手持ち魔力2,000Gを持っているとしましょう。総魔力も82,520Gで達成目前です。ここでもしもアースシェイカーをくらったらどうなるでしょうか。土地価値は10,560Gに、一気に総魔力も13,160Gまで落ちてしまいます。護符価値に至っては、1Gまで下落します。
もしもここで2人の敵セプターからコラプションを2発被弾したら、枯渇します。8時間かけて築いた達成間近の資産を、1ラウンドで完全に失います。これが90000Gにおける最強のコラプションです。定率のダメージを与えるドレインマジック、スカージ、ソウルコラプターでは絶対に真似できません。90000Gで唯一枯渇の可能性があるのはコラプションなのです。
このケースは机上の空論であり、そこまで場が整うことは稀です。稀ですが、確実に存在します。事実、プロムスデルではアバランチで、まがたまではアースシェイカーで近い状況が現出しています。コラプションを見た人はこの状況にだけは絶対に陥らないように、コラプションを撃つ人はこの状況になるべく近づけるように努力するべきです。
では、コラプションを撃たれる側になって考えてみましょう。この最悪な状況を避けるべき手段はなにか? バリアー、手札干渉、そういったもので解決できるのであればシンプルで良いでしょう。しかし、90000Gにおいては鉄壁の防御なんてものはありません。必ず綻ぶ時間帯が出てきます。
そのため、手札に頼らず実施できる対策をしておく必要があります。具体的には、レベル1の土地を一定数確保しておくことです。アースシェイカーを撃たれた後に、速やかにレベル1からレベル5へとレベルアップできれば護符価値は30G近く上昇し、致命傷を避ける事ができます。私は4年前のプロムスデルではこういう視点が持てておらず、かたっぱしから水土地をレベル5にしてしまい、リカバリーに苦労しました。レベル5の土地は、言ってみれば燃え尽きた導火線です。レベル1土地という火がついていない導火線を、どこからでも着火できるようになるべく分散して設置しておくことが重要です。通行料収入との兼ね合いもあるのでレベルを上げるメリットももちろんあるのですが、このコラプションの可能性は無視することはできません。
大前提をもう一度繰り返します、基本的に90000Gのコラプションはなまくらです。なまくらですが、刺し殺すだけのポテンシャルを秘めているのもまたコラプションだけなのです。
2-3.まとめ
コラプションでは殺せないが、枯渇させられるのはコラプションだけ。
2-4.リンカネーション
リンカネーションを採用するべきブックの条件とは何でしょうか。いろいろあるでしょうが、本項では「カードごとの役割がはっきり違うブック」「ブックを回すスピードを早くしたいブック」の2点であると主張します。
まずは「カードごとの役割がはっきり違うブック」についてです。
端的な例ですが、ミノタウロス25枚、マナ20枚という45枚のブックがあったとします。残り5枚、ドローカードを入れるとしたら何を積みますか? ……リンカネーションは積みませんよね。マナとミノタウロスを捨てて、マナとミノタウロスを引いてきても意味が無いからです。このように、カードごとの仕事が似たり寄ったりのブックは、リンカネーションという選択肢の更新が意味を成さないので、シナジーは弱いといえます。
一方、一般的な90000Gブックはどうでしょうか。例えば序盤ではピルグリムやシンリュウといったカードは持っていてもしょうがありません、行使したいのはフェイトやボジャノーイなのですから。逆に終盤になるとフェイトやボジャノーイは流してでも、グレイスをひいてきたいところです。このように、時間帯ごとにカードの価値がどんどん変わり、確実にその時間帯には使えないカードが存在するのが90000Gブックの特徴です。リンカネーションで流すべきカードが必ずある、ということですね。
次に、ふたつ目の「ブックを回すスピードを早くしたいブック」についてです。
そもそもリンカネーションは本当にブックが回るのが早くなるのか? ツールを使って検証してみました。ホープが2枚入ったブックを100ラウンド回すと、平均で約113枚カードが引けます。これがリンカネーション2枚になると、適当打ちでも100ラウンドで平均123枚、手札が4~6枚ある時限定で撃つように心がけると約126枚引くことができます。ホープとの差は実に13枚。この13枚の中に、グレイスは、パーミッションは何枚入っているでしょうか。
90000Gの終盤では、カード1枚あたりのパワーが極めて大きくなります。グレイス1発で10,000G、パーミッションで周回ボーナス7,000G、ソウルコラプターで1発100枚護符奪取。カードの価値が高まるので、カードを1枚ドローすることの価値も高くなります。リンカネーションによってドローのスピードを担保することの効果はとても大きいといえるでしょう。
以上のことから90000Gではリンカネーションを入れない理由はない、と断言いたします。グレイスも、コラプションも、とりあえず置いておきましょう。先ずリンカネから始めよ、です。
2-4.まとめ
リンカネーションは90000Gのために生まれたドロースペル。
2-5.ターンウォールとスクイーズ
ターンウォールの使いどころとは? 殺せない敵拠点クリーチャーを壁にする、移動侵略の防止、シミュラクラムをかけられたクリーチャーの隣に打ち込んで緊急避難、ファンタズムが付いたアイドルの除去。スクイーズの使いどころとは? 行使されては困るシンリュウやアスピドケロンを絞る、グレアムで対処できないブラックオーブを処分する、シミュラクラムを撃たれたのでソウルコラプターを処分する、もうすぐ上がれそうなのでアースシェイカーを切る。
二つとも枚挙に暇がありません。どれもとてもクリティカルな働きをしてくれます。これも、リンカネーションの項で述べた2点が関係しています。
先の項では「90000Gの終盤では、カード1枚あたりのパワーが極めて大きくなる」と論じました。カード1枚あたりの効果が大きくなるため、その1枚を処分する効果も高くなるわけですね。特に盤面のクリーチャーについては、シンリュウやアスピドケロンのような、90000Gに適合できるクリーチャーが生き残りがちなので、必然的に高性能のクリーチャーが多くなります。ターンウォールの効果がより高まります。
スクイーズについては「確実にその時間帯には使えないカードが存在する」ということが追い風になります。90000Gの後半では、少なく見積もってもブックの半分はガラクタになります。10枚引いたらまともに使えるのは5枚程度、そんな状況が珍しくありません。その中の1枚を処分できたら、敵の選択肢を大きく削ぐことができます。
なお、ちょっと余談になりますが、スクイーズ以外の手札干渉はどうでしょうか。シャッターは論外。ブラックスミスしてソウルコラプター出てきたら目も当てられないじゃないか! まあ、流石にそれは冗談にしても、90000Gにおいて150Gを与えるというリスクをほぼ0と見込めば、下手なカードを与えるよりも良いでしょうリフォームは、ブックが必ず何周もすることと、皆がリバイバルを入れていることを考えると、普段より効率は下がります。セフトは面白いですね、セフセフのコストがほぼ0なのもちょっとユニークです。
2-5.まとめ
強いシンリュウを処分できるカードは当然超強い。
3.アイテムの役割
3-1.ソウルコラプター
通常の試合と比べると、90000Gにおいては「護符を購入する機会」というリソースはとても大事になってきます。600枚の護符が必要なのに、1度に買える護符はたったの50枚だからです。最低でも12回の聖堂アクセスと、12回の十分な現金調達が求められることになります。過去の対戦でも、まがたまのように1周につき1回しか聖堂を通過できないマップや、ラティスのように聖堂アクセスが悪いマップだと、ますます護符を買う価値が重要になってきます。
護符を奪ったり失わせたりする能力は、この「護符を購入する機会」を不可逆的に奪う事ができる、90000G最強の干渉であると考えます。護符500枚持ちの終盤で、99Gまで上がりきった護符を150枚奪われたら単純金額で14,850Gの損失です。護符ボーナスを奪われたりしたら、更に目も当てられない。なおかつ、聖堂機会3回分を失って、店頭に並んでるのは買い戻すのが難しい上がりきった護符……。
シンリュウと同じく、絶対に無視できない力がこの斧にはあります。自分で使うかどうかはともかくとして、対策ができていないブックに勝ち目はないと言えるでしょう。
プレイ面での対策は「護符を分散購入する」ということです。水護符600枚から奪われるよりも、水護符350枚と火護符250枚から奪われたほうが被害は軽くて済みます。
分散投資のリスクとしては、ワンアクションでの上げ幅が小さくなってしまうことです。なかなか水も火も連鎖を組んでレベルアップと言うのは難しいです。最初の項で「90000Gは波」と表現しましたが、波の振り幅がどうしても小さくなってしまうので達成は遅くなりがちでしょう。
そう考えると、ソウルコラプターは90000Gにおいては一挙に縦伸びすることを牽制するメテオのような効果があると言えるかもしれません。
3-2.グレムリンアムル
ソウルコラプターを壊せる。それ以上のことを誰が望むだろうか! いや、もちろんカウンターシールドも壊したいんですけどね。
ソウルコラプターに対する回答として、クリーチャー側からの回答はボジャノーイかナイキーなんですよね。ラクサスが殴ってきてもほぼ大丈夫。ただ、現実問題としてそれだけで対策をするというのはとても難しいものです。普通の対戦であれば拠点と連鎖土地を守れば事足りますが、90000Gではどこにかかるかわからないシミュラクラムをすべてカバーしなければなりません。ラティスでのかぼさんのように、少なめの土地にナイキーを厳選配置して、適宜リリーフするくらいのことをしないと、クリーチャーのみでソウルコラプター対策は完成しません。それよりはグレムリンアムルを一定数担保するというのが、効率的な回答のように思います。
3-3.防具アイテム
守るためのアイテムとしてはカウンターシールド、ガセアスフォーム、アワーグラス(先制アイテム)の三択でしょうか。
まずは永遠のスタンダード、カウンターシールド。これもうシンリュウが使えない事以外はパーフェクトですよね。シンリュウとアスピドケロンがいる時点で、HPの数字の意味はほとんどありませんから、ニュートラクロークなどを選ぶ動機はないでしょう。
次点でガセアスフォーム。シンリュウが使えるということだけでこちらを選ぶかどうか? ただ、ソウルコラプターを握られるととても使いにくいという欠点も。
アワーグラスは、カンやファルコンソード持ちのシンリュウに殴られたボジャノーイやナイキー、変化球どころでいけばコカトリスなんかの守備に使えます。シンリュウに乗せるとボジャノーイを殴れるのもポイントです。
ただ、守備アイテムは「保持時間が長くなる」という特徴があります。リンカネーションで手札を捨てる構築が強い90000Gで、防具アイテムを入れる必要があるのかは疑問が残ります。私は「領地に置いた時のクリーチャーの素の能力で守る」「シンリュウなどで奪われた後に奪い返すギミックを担保しておく」という回答が良いと思います。
4.クリーチャーの役割
かなり種類が多岐にわたりますので、箇条書きで行きます。
- シンリュウ:基本にして最強。サイズが一番大きいというのは一番強いということ。使わない自由はあるが、対策をしない自由はない。火に入れないのとカウンターを使えないことをどう評価するか。
- アスピドケロン:案外機能時間帯は遅い。火に入れることと、カウンターシールドを使えるというシンリュウのスキマを埋めるニクイ奴。
- ボジャノーイ・ナイキー:ノーアイテム同士の攻防が発生しやすい90000Gにおいて、シンリュウに手ぶらで耐えるのは本当に魅力的。手ぶらでシンリュウから守れるかどうかをシンリュウテストと名付けよう。この2体対策のためにアワーグラスを入れる理由がある。
- デコイ:シンリュウテスト合格、90000Gのブック構築上ディスカードに困ることもあまり無い。優秀であはあるが、吹けば飛ぶMHPと、無視できないブラックオーブ採用率をどうカバーするか。
- シーボンズ:レベル5になったら落ちることなんてない。後半戦に引いてくると配置制限が苦しすぎたりするが、シンリュウテスト合格は大きい。アンチエレメント入っているのも、ひろよしさんのブックしか見たこと無いし。
- アンダイン・シェルクリーパ:シンリュウテストは合格だが、水+ソウルコラプターに弱すぎる。グレムリンアムル複数枚以上の対策は必須か。ルナストーンを持ってシンリュウを、コラプターを持ってボジャノーイを殺せる点は評価できる。
- ラクサス:生けるソウルコラプター。コイツが斧持つと51%の護符を奪ったりもする。グレムリンアムルで決済できない点はとても優秀だが、守備力はゴブリンレベル。でも殆どのクリーチャーはゴブリンレベルなので、どうでもいいか。
- パイロマンサー:デコイをどこまでメタるのか。アスピドケロンに脆弱ではあるが、火クリでまともにアスピドケロンと渡り合えるクリーチャーはろくにいないので特にデメリットでもなかろう。
- グラニットアイドル:グレイスを防ぐ恐ろしい奴。ゆめまくらさんは必要十分のグラニットでラビド村戦を完封した。試合終盤のグレイスをディスカードさせるメリットがどれだけ大きいか! ターンウォールを入れる理由になる。
- アヌビアス・ソウルコレクター:シンリュウを凌ぐポテンシャルはあり、事実ラティスでは凌いでみせた。しかし、やはり150枚の中にインシネレートが1枚でも入っていたら破綻するクリーチャーは多くは入れられないだろう。
- ソン=ギョウジャ:火土地にシンリュウを突っこむためのギミック。しかし、火クリを殴るなら大体アスピドケロンで足りてしまう感はある。ラクサスとかデコイ積んだりも出来るけれど、いまいち器用貧乏。
- オドラデク・サンドマン:焼きブックを本気で組むのであれば検討しなければならない。カウンターシールド構成にしてしまうとリンカネがしにくくなるのが辛いところ。
- シャラザード:バリアーをはがせることは評価に繋がるが、カウンターシールド前提なのが辛い。
- サルファバルーン:シンリュウ、アスピドケロン、ボジャノーイを絶対殺すマンとなれるが、焼き対策のマスグロースが入る可能性が0ではないのが苦しいところ。
- ヒートインプ:1種類買いをブチ殺す小さな悪魔。手順が足りなくなりがちだが、100ラウンドも狙いすましていれば絶対チャンスは有る。
- ケマゾツ:1種類買いをブチ殺すが、後半に盤面に残っているクリーチャーを殺せることはあまり無い。
5.ブック「アポトーシス」の設計思想
5-1.ブックの構成とその骨子
「アポトーシス」(by ヨシ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
サルファバルーン | 1 | グレムリンアムル | 2 | イサーフラッシュ | 1 |
パイロマンサー | 1 | ソウルコラプター | 2 | インフルエンス | 1 |
アスピドケロン | 2 | ブラックオーブ | 1 | グレイス | 3 |
アンダイン | 1 | シミュラクラム | 3 | ||
シーボンズ | 1 | スクイーズ | 1 | ||
シンリュウ | 3 | スパルトイ | 1 | ||
ダゴン | 1 | セフト | 1 | ||
フェイト | 2 | ターンウォール | 2 | ||
ボジャノーイ | 3 | チャリオット | 1 | ||
ラクサス | 1 | パーミッション | 4 | ||
スレイプニル | 1 | バリアー | 2 | ||
ナイキー | 1 | ファインド | 2 | ||
マスファンタズム | 2 | ||||
リバイバル | 1 | ||||
リンカネーション | 2 | ||||
クリーチャー | 18 | アイテム | 5 | スペル | 27 |
たとえどんなブックが流行ろうと、シンリュウ、アスピドケロン、ボジャノーイを有する水ブックが最強であるというのが私の結論でした。水メタを張られるリスクを受け入れ、同色と被った時にもアドバンテージを生み出せるようにする。ブック構築の発端はそういう思想です。それを支える骨子は、十分なシンリュウと、ソウルコラプターと、強いドローです。
5-2.クリーチャー
クリーチャーの強度は3グループに分けられると考えます。最強のサイズとなるシンリュウとアスピドケロンが一軍、とりあえずシンリュウの素殴りに耐えられるシンリュウテスト合格者が二軍、それ以外が三軍です。そう考えると一軍が5枚、二軍が6枚、三軍が7枚という内訳です。カタストロフィやテンペスト、万が一のエクスプロードすら否定できないと読んでいたので、全焼き後のリカバリーを意識して90000Gにしては多めの18枚+スパルトイ1枚を確保しました。クリーチャーの枚数が多い方が、ソウルコラプターも行使しやすいですしね。
一軍のクリーチャーは数を揃えないと、後半のレベル1攻防にとても弱くなってしまいます。ゲームの後半では空き地がほとんど無くなるため殴って土地が取れないとどうしようも無いですし、相手の導火線となる土地を奪う能力も担保しなくてはなりません。ほとんどのケースでアスピドケロンよりシンリュウのほうが強いので内訳に悩みましたが、ゆめまくらさんが火ブックでくる可能性が割と高いと読んで少しアスピドケロン多めの構築となりました。
二軍はボジャノーイとナイキーが要となります。先制アイテムもグレアムがあれば怖くない。ボジャノーイに限らず、ディスカードがあるカードは、先の項でふれた通り「その時間帯に使えないカードが確実に存在する」90000G対戦では採用しやすいのが良いですね。今回の対戦ではゆめまくらさんのジェネラル=カンにボコボコにされていましたが、先制解決型の本質的な強さは90000Gでは揺るがないものだととらえています。本当にボコボコにされましたけど。アンダインは最悪ソウルコラプターが多すぎる場であれば置かなければいいと思って1枚採用。シーボンズはソウルコラプター持ちの横に配置したりしても良いです。
三軍は、正直なところ防衛能力はほとんど期待していません。無効化アイテムがない限り、中盤以降のシンリュウの前では、ダゴンとゴブリンの間に差は無いのです。土地の防衛は期待せず、端っこに転がしておいて生き残ればラッキーくらいの感覚でした。
ダゴンはカウンターシールドに対してシンリュウとアスピドケロンが死なずに帰ってくるように、フェイトはリンカネーションが出来ないタイミングでもドローが滞らないように、スレイプニルはソウルコラプターの機能率を上げるために、サルファバルーンは同色被りのシンリュウ・アスピドケロン・ボジャノーイを殺すために、パイロマンサーはデコイ対策に、生きたコラプターとしてラクサス。一芸一能です。
ただ、サルファバルーンはマスグロースのおかげで産廃に(自分でもマスグロ入れることを検討したはずなのに!)、スレイプニルはラティスの構造上必要なタイミングで領地指示が得にくかったので失敗でした。ラティスではヒートインプやスレイプニルのようなタイミングがシビアな領地能力ではなく、ブックワームやフェイトのようにいつ使っても一定の効果がある領地能力のほうが強いですね。90000Gというレギュレーションに目がいってしまい、ラティスの構造の本質を見落としてしまっていました。
それぞれが完全な専門職ですので、ボードのどの位置に置くかが重要になってきます。交通量が多いところにシンリュウを、人通りが少ないところにダゴンとフェイトを。そのためリリーフも有用なのではないかと検討しましたが、マスファンタズムとのディスシナジーが気になり却下。しかし、かぼさんのリリーフはとても機能しているように見えました。今後検討したいスペルの一つです。
5-3.アイテム
1軍クリーチャー5枚&グレムリンアムル2枚、それと必殺のソウルコラプター2枚。これがアポトーシスの2本の刀です。
ソウルコラプターはコストに比べてリターンがものすごく大きい。前述の水4被りみたいな状態になったときには確実に被った護符をかっさらう、そうでなくても極端な縦伸びは殺せる。地上で護符戦をすることになろうとは。
グレムリンアムルは単純に拠点陥落用の要素もありますが、その汎用性がすばらしい。これ握っていればソウルコラプターされないというのはとても大きなメリットです。
最終的には山盛りのソウルコラプター枠で私のシンリュウが最強のサイズになる構築なので、ノーアイテムで守りきれる、守りきれなくても取り返せると判断し、防衛専用アイテムは0です。ゆめまくらさんはシンリュウブックでない、すなわちカウンターシールド構築でくると読んでいましたので、そのメタかつデコイも殺せるブラックオーブを1枚。ここはブックが読めなければ同色のボジャを殺せるようにアワーグラスにしたところです。
5-4.スペル
シンリュウとソウルコラプターが刀であれば、リンカネーション2枚とファインド2枚がこのブックの盾です。必要な要素を必要なタイミングで引けるように、マスファンタズムやグレムリンアムルをリンカネーションで流せない環境下でもドローが滞らないように。90000Gでは対策スペルを増やすんじゃない、ドローを増やすのだ!
シミュラクラムは多めの3枚。これは自分でコラプターできる必殺のタイミングで打てなくても構いません。第3者のソウルコラプターの斧先を、別のセプターに向ける効果もあり、それはかなり高いものです。実際今回はフィラさんの斧を、ゆめまくらさんに行使させることができました。
インフルエンスはサボらず1枚。インフルエンスの威力はひろよしさんの日記に詳しいのでそちらをご参照ください。
グレイスは悩んで3枚。ゆめまくらさんにラビド村でグラニット完封された経験から、グレイス頼り切りの構築の脆弱性は認識していましたが、それでも2枚以下に削る理由は見あたらない。
イサーフラッシュは正直空気でした。ナイキーとサルファバルーンをサッと置けるかと思ったのですが、私のブックだと風と火を1個ずつ押さえるくらいの余裕はありました。なおかつ、いざサルファを置きたいタイミングでイサーフラッシュを撃てたかと言われると……。バリアー崩しは、もう少し別のギミックで担保した方が良さそうでした。カオスパニックアリだったのでは。
ピルグリムは不採用でしたが、失敗だった気がします。パーミッション4積みでドローを強めれば毎回聖堂行けるし、高額護符を100枚買えるタイミングなんてそうそう無いと見込んでいましたが、後半戦に喉から手が出るほど欲しい状態に陥りました。適正枚数はと考えると悩ましいところですが、侮れないスペルです。まがたまやラティスのように聖堂回数が限られているマップでは検討しなければならないですね。
結びにかえて
や、誰が役立てるんだって話なんですけどね。コレ。ただ、90000Gに対する熱意をここに表明しておきたかったのです。ネタまっていた90000Gですが、4年間でいろいろな知見が溜まってきています。ここまでの熱意を投資するだけの懐の深さが90000Gにはああるのだ、ということをお伝えしたかったのです。コレも読んで、参加したいな、観戦したいな、と思ってくれる人が1人でも増えたら幸いです。