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トップページ » 吉永さん » 3分で読むカルドセプトショート・ショート 『ひとつのアイテム』

『ひとつのアイテム』

1.

ミゴールとケットシーは幼い頃から近所の火土地に住んでいる仲良し同士だった。お互いの攻撃が無効化されるため、決して傷つけあうことはなかったのだ。二人はよくお互いの土地に遊びに行った。

二人はそれぞれの夢を語り合った。

ケットシー「僕は無効化を活かしてこのレベル5の土地を守り抜きたい。でも、ミゴール君の知っている通り僕はST40以上の攻撃しか無効化できなくて素のHPも低いから、いつまで生き残れるか分からないんだ」

ミゴール「俺は無効化と強打を活かして最強の侵略クリーチャーになりたい。俺は強いアイテムを色々集めてるんだぜ。ブーメラン・プリズムワンド・グレムリンアムル・トラペゾンなんかもある。中でもこのストームコーザーはお気に入りなんだ。これでいつか高額拠点を奪ってみたい。もっとも、お前には俺の攻撃は無効化されてしまうけどな」

二人は笑った。

 

2.

しかし、ある日それは起こった。誰かが踏んだ祠の効果によりミゴールのSTが35に下がってしまい、ミゴールの攻撃がケットシーに通るようになってしまったのだ。ケットシーはミゴールの土地に遊びに行けなくなり、またミゴールも怯えるケットシーを見るのがいたたまれず、自然と二人は疎遠になっていった。

 

3.

長い時が経ったある日、ミゴールがケットシーの土地に侵略してきた。ケットシーはちょうどアイテムを切らしていたため、ミゴールの本気の一撃にはとても耐えられない。

「ああ、これも弱肉強食の世界の定めか…」

かつての楽しかった日々が思い出された。二人で暗くなるまで遊んだっけ。いつかミゴール君は最強の侵略クリーチャーになるのが夢だと話してくれたな。僕の拠点を奪えばその夢は叶えられるだろう。ミゴール君に殺されるのなら、それは悪くはないかも知れない。

ミゴールが何かのアイテムカードを手にしたのを見て、ケットシーは覚悟を決めた。

 

ミゴールが手にしたのは、トラペゾンだった。ミゴールはおどろおどろしいバ=アル将軍へと姿を変え、手に持った大鎌はケットシーへ振り下ろされた――。

 

4.

…ケットシーは、ST50のバ=アルの攻撃を無効化した。ミゴールの侵略は失敗に終わったのだ。バ=アルに代償として支払われたストームコーザーが辺りにバラバラに飛び散った。

「ミゴール君は全てのクリーチャーの能力やアイテムの効果を熟知してて絶対に計算ミスをしないのに…一体どうしたんだろうか?」

とケットシーは怪訝に思った。

 

しかし、変身が解け、煙の中から姿を現したミゴールの懐かしい微笑みを見て、ケットシーは全てを理解した。ミゴールは貴重なストームコーザーを失っても自分のSTを召喚時と同じ40に戻したのだった。大切な友達を傷つけないために。

ミゴールは「最強の侵略クリーチャーになるために下がったSTを元に戻したかっただけだよ」と話したが、ケットシーはそれは嘘だと分かっていた。

こうして二人はまた以前のようにお互いの土地を行き来する仲になり、その後いつまでも仲良く暮らしたという。

 

おわり

 

【あとがき・解説】

これは少し前に知ったゼファーさんのサイトのホーリーラマのお話(http://zephyr888.blue.coocan.jp/creature/secondex/cr23_00holyllama.html)に感銘を受けて書いた物語です。

以前私のツイッターで呟いたものをショート・ショート風に編集・加筆してみました。小さい頃に星新一が好きだったので少し影響を受けているかも。

本文の解説ですが、(過去作は詳しく知りませんが)今作の仕様として、トラペゾンやプロテウスリングなどでできる「変身」が解けた際、そのクリのステータスは召喚時のそれに戻ります。このためミューテーションなどの育成系のカードと変身系のカードは相性が悪く注意が必要だったり、削れたHPを変身によって戻すという小技があったりするのですが…これをネタにしてみました。

この記事への反応

  • yoshiyoshi (2013年9月10日)

    星新一派としてはとってもグッド。ストームコーザーを大事にする描写も加わって、いっそう良い塩梅になりましたね!

  • 吉永さんyoshinagasan (2013年9月11日)

    >yoshiさん

    マナよりストームコーザーの方がミゴールっぽいなと思ったのでそっちにしてみました。
    ミゴールはこのあと2枚目のストコを使ってコロッサスを持った緑色のL5の猫に150ダメをかましたとかかましてないとか。

  • 森陽ShinYoh (2013年9月11日)

    トラペゾンが出てきたときに「なんで?」と思いましたが、伏線になっていたとは!
    カルドの設定をうまく活かしながら起承転結のストーリーが完成していて、とても面白かったです。
    ほっこりした!

    変身効果は好きで、特にDS版などではジーニーの「3つの願い」をリセットするのに重宝しました>プロテウスリング

    星新一は社会風刺的というか、某番組でよく取材されたことも相まってプチダークな印象が強いもので(苦笑
    絵本のような優しいお話だなと感じました。高橋校長のホーリーラマのお話もそうですよね。

    因みに、うちのラマは対戦相手を高額地へ誘うゲスいやつでげす。

  • 吉永さんyoshinagasan (2013年9月11日)

    >ShinYohさん

    変身によるジーニーの願いのリセットは面白いですね。願いが残り1回の高額ジーニーを作っておけば誰か突っ込んできてくれそうです。

    今作では毒が非常に強く周回回復を挟まなければ大抵のクリが2回の戦闘で死んでしまうので、いいところで変身してHPを元に戻すような使い方ができれば格好いいですね。

  • SarutaniSarutani (2013年9月14日)

    星新一ならST35になったミゴールを恐れたケットシーがトラペゾンを使うようそそのかす…って方向に持って行きそうw

  • 吉永さんyoshinagasan (2013年9月14日)

    >Sarutaniさん

    ブラックなほうの星新一ですね。

    ケットシーがミゴールに「そのクイサンがセフトで狙われてるぜ、トラペゾンを使ってバ=アルの代償で消してしまえよ」等とけしかける

    ミゴールのSTが40に戻ったところでケットシーが「騙されやがって」と喜び、罵る

    ミゴールが次に引いたカードはライフスティーラーだった

    というお話ができそうですね