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トップページ » 福沢諭吉 » カルド青年 太陽☀まこす  ZERO

             外伝  太陽に刻まれしまこすの過去
  
  
     
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  太陽の恵みが一際強く注がれる草原で、まこすは一人で座っていた。
「今日も力強くも美しいのう」
 そう呟くまこすの言葉は、太陽に向けて言われた。
「しかし、今日は暑いのう……」
 まこすは額に流れる汗を袖で拭い、体を横に傾ける。
「どっこいしょ……」
 (でも、あの時味わった暑さに比べれば、とても優しい暑さやな)
 草原に大の字で寝転がったまこすの意識は、18年の時を遡っていた……。

 

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 18年前  大阪・西成村

「大漁大漁~」
 数え切れない程の魚が入ったバケツを片手に持ち、まこすは西成村への帰路を、駆け足で進んでいた。
 両親には、「村の公園で遊んでくる」と言い、家を出てきた。まさかこんなお土産を手に、帰ってくるとは思うまい。
 時刻は、午後18時過ぎ。「帰りが遅い!」と母から、多少のお小言は言われるだろうが、それもこの魚の大群を見せればすぐに収まるだろう。
「こんだけ釣ったら3日はもつで~。おかんもおとんも大喜びや!」
 予想以上の収穫に大満足のまこすは、この魚達を見た両親は、どんな反応をするか想像して、ニヤニヤと顔を歪ませていた。
 しかし、村まであともう少しの所で、まこすは突然足を止めた。
「なんや?この臭いは……」
 そう言い、まこすは鼻から息を大きく吸って、何の臭いか確かめようとした。
 あたりには、鼻に突き刺すような刺激臭が漂っている。そう、まるで何かが
「焦げてるような……」
 脳裏に考えたくもない未来が膨らみ、不安に襲われたまこすは、魚の入ったバケツを足下に乱暴に置き、全速力で村へと駆けた。
「なんやこれ……」
 村が視界の隅に入り、まこすは呆然とその場に立ち尽くし呟いた。
 ……まこすの予想は的中した。
 炎が村を包み込み、黒煙で空は覆い尽くされている。達ち並んだ家々も、通い詰めたすき家も、よく両親に連れて行ってもらったパチンコ店も、目に映る物全てが赤く照らし出されていた。
「ちょいまちいや……おかしいやろ!何がどうなっとんねん。あかん、これはあかんで~」
 あまりにも現実離れした光景を目の当たりにし、声を荒げ、混乱の余り暴れ出すまこす。
 意味のない行動。そんな事をしてる間に足を動かした方が、遙かに賢明だ。しかし、そのように判断し行動するには、まこすはまだ幼すぎた。
「こんなはずじゃなかったんや!帰ったら、おかんとおとんに……あ」
 そこでまこすはハッとした。
 (おかんとおとんは今何処や……)
 そう。今の時間、母は家に、父はパチンコ店にいるはずなのだ。
「行くっきゃないやろ!」
 そう叫び、まこすは駆け出した。炎に焼かれた残骸や、火の塊でできた壁などが、所々道を塞いでいたため、自宅にたどり着くまでに、普段の3倍近くの時間がかかった。
「アヒィィィィィン!?」
 やっとの事で、たどり着いた自宅を目撃し、頬に両手を当て、まこすは叫んだ。
 そこに有ったのは、黒く染まった木材だけだった。
 心のどこかで、予想はしていた。だが自分の目で確かめるまでは信じられなかった、いや、信じたくなかったのだ。
「おかああああああああああああああああああぁぁぁぁぁんっ」
 名前を叫ぶ相手が、ここにはいない事は明らかだった。だがまこすは叫ばずにはいられなかった。
 すると、後方から声が聞こえた。
「君!何をしている。さっさと逃げなさい」
 そう言い、こちらに走ってくる一人の青年。青年に向けまこすは、焦り気味に言う。
「でも、おかんとおとんが……」
 自分がなぜ避難をしていないか、間接的に伝える。まこすの言葉を聞き、少し考える素振りを見せ、青年が聞いてくる。
「君、もしかしてまこす君かい?」
「なんで僕の名前を知ってるんや!?……そうや、僕がまこすや」
 食い気味に返答し、肯定する。
「さっき、君のお母さんとお父さんがまこす君を探していたんだ。俺もまこす君を探してここまで来たんだよ。大丈夫、君の両親は無事だよ。さぁ僕たちも急いで避難しよう!」
 言い終わらない内に、まこすの体を抱え、走り出す青年。
 まこすは両親の無事を聞き、嬉しさと安堵から、涙が溢れる。
 (ほんまよかったわ~)
 そして数分後、青年が向かった先で、しゃがみこみ涙を流す母と、母の肩を抱き、頭をなででいる父の姿が見えた。
「おかん!おとん!僕はここにいるで~!」
 まこすは精一杯のどを絞り、大きな声で二人を呼んだ。
「まこす!無事だったのね!」
「よかった。まこす怪我はないか?」
 そう言いながら、まこすに駆け寄ってくる二人。まこすは溢れていた涙を袖で拭い、笑顔で言った。
「この人が助けてくれたから大丈夫や!」
 青年の体から降り、指を向け答える。
「嗚呼っ、嗚呼っ、まこすを助けて頂いて本当にありがとうございます」
 涙ながらに言い、言葉を続ける母。
「あなたが居てくれてよかった。あの、お名前を教えて頂けませんか?」
 額に流れる汗を、タオルで拭きながら青年は答えた。
「僕の名前は―――」

 

 

「まこすさん。まこすさん。」
 自分を呼ぶ声で、まこすの意識は過去から現在へ帰還した。
「もう何を、ぼーっとしているんですの?」
 そう言い口元に軽く手を当て、フフッと笑う少女。
 金色の髪に青空のような碧眼を備えた、可愛らしい少女だ。頬に薄く見えるそばかすが、さらに可愛らしさを引き立てている。
「ああ、すまん。ぼけっとしとったわ。なんや、みのり?」
 彼女の名前は、みのり。王都マルセスブルクのお姫様だ。
「もうお昼ご飯出来てますわよ。まこすさんがなかなか来ないから探しに来たんですの。もうお腹ぺこぺこですわ」
 軽くお腹をさすり、まこすに手を差し伸べてくる。みのりの手を借り、腰を上げるまこす。
「さっ、行きましょう。しぐれさんが待っていますわ。」
 まこすを引っ張り、駆け足で進むみのり。
 ―――みのりに引っ張られながら、まこすはあの日、自分を助けてくれた青年の事を考えていた。
 (あの人は今頃何をしとるんやろなぁ……)
 顔を思い浮かべ、まこすは改めて青年に対する感謝の言葉を口にした。

「イノセンスさんありがとうございます!」

                外伝  太陽に刻まれしまこすの過去   (おわり) 

この記事への反応

  • nonamenoname (2014年8月12日)

    で、書いてる あなたは誰やねん!(笑)

  • aa (2014年8月13日)

    ありがとうございます!

  • matsuhisa (2014年8月13日)

    イノセンスさんありがとうございます!

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a 福沢諭吉
0721-4545-4649

よろ~

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