序章 邂逅 開かれし扉 太陽に愛された男
「よっしゃ今日は稼いだるで~」
そう呟きながら青年が軽い足取りで麦に囲まれた道の中を歩いている。
黒い長髪をなびかせたアラサーのニートだ。
黒縁メガネを掛け、赤いティーシャツの上に、背中に赤く太陽のマークが描かれた漆黒のマントを羽織っている。
「昨日は6万負けたからの~」
青年の名前はまこす。
まこすはパチンコ店に向かっていた。
(今日はどの台で打とかな~。プリキュアもええしエヴァも捨てがたいのう……でもやっぱまどマギやな!) そんな事を考えながらまこすは歩いていた。
するとどこかから人の話し声が聞こえてきた。
「見つけたぜ!ゴリガンまん」
「もっちー!またお主か!!」
声の出所を探ると、15メートルほど先の、開けた場所で一人の中年男性と、顔とひげがついている一本の杖が立っていた。
「ゴリガンまんの首には賞金がかかっているんでな」
そう言いながら杖に歩み寄る中年男性。
「賞金稼ぎのわしとしちゃ、見逃すわけにゃいかね~ってわけさϵ( ‘Θ’ )϶」
「こ、こんなところで……」
そう言い、下をうつむく杖。
「もはや、こやつと戦えるほどの魔力はのこっておらん……カルドラ様、申し訳ありません、任務は失敗のようです……」
(いや、杖の首って何処やねん) など色々思うところはあったが、まこすはとりあえず二人に近づき、声を大にして言った。
「ちょいまちいや」
まこすの声に反応し、一人と一本がこちらに目線を向ける。
「なんやねん君ら。何をそんなにカリカリしとんねん。何があったんかは知らんけど、とりあえずお互いごめんなさいしよや。なっ!」
満面の笑みでそう言い、まこすは喧嘩の仲裁を図った。
するともっちーと呼ばれていた男が、訝しげな目を向けてきた。
「なんだ、お前は?」
うんざりとしたような顔を隠そうともせずに、そう問いかけてきた。
「僕はまこすや!……太陽まこすや!!」
勢いよく名乗り、両手を太陽に向け突き上げる。
「この気は……」
値踏みを計るような目を向けてくるゴリガン。数秒後、驚く表情を見せゴリガンはまこすに向けて言った。
「そなたもセプターですな!た、助けて下され!」
「アヒッ!?ボッ、ボクっすか~!?」
ゴリガンの突然の懇願に、まこすは反射的に言葉を返した。
「こいつもセプターだと!?」
もっちーも、少し驚きの表情を見せる。
だがすぐに余裕の表情を見せ、言い表す。
「フッ!そうだとしても、わしに関わるのはやめときな。まこp」
突然まこすの事をまこpと呼び、言葉を続ける。
「わしは、ソルタリアで最強のカードハンターだ。まこpのかなうような相手じゃない。とっとと消えた方が身のためだぞϵ( ‘Θ’ )϶」
「私がこやつに倒されるようなことになれば……宇宙は破滅してしまうのです!どうか……」
もっちーの言葉に繋げ、ゴリガンがとんでもない事を言い出す。
「あー、もうなんやねん自分ら!」
いきなり宇宙が破滅するなどと言われても信じる人間がいるだろうか?まこすは一人と一本の話など微塵も信じていなかったが、一人と一本は興奮気味だったので、とりあえず場を落ち着かせる為に言った。
「あー、分かった分かった。ほな僕が相手したるわもっちーさん。だから戦いが終わったら、ちゃんと事情説明してや?」
投げやりな言い方で発語するまこす。
「まこp……わしとやる気か?」
そう言うもっちーの顔は笑っていた。
「まぁそうやな。ただし試合が終わったらちゃんとゴリガンに謝るんやぞ!?二人に何があったかは知らんけど、ちゃうねん、誰が悪いとかちゃうねん。皆悪いねん。もちろん僕も悪い。だから皆でごめんなさいや!」
「良いだろう。ただし俺が勝ったら……貴様のカードを頂く!」
「ええ年して何言うとんねんもっちさん。まぁええわ、ほないくで!」
これがまこすとゴリガンの出会いだった。
この時まこすは自分がそう遠くない未来に、世界をかけ戦うことになるなど、夢にも思わなかった。
(つづく)